【はじめに】―ずっと汗で悩んできた私の話
私は多汗症治療をして、脇汗の悩みからはほとんど解放されました。それまでにいろんな経験や思いがあって、今このサイトを立ち上げるに至りました。
この試行錯誤の数十年が、誰かのお役に立つかもしれない。仲間がいると思って安心してくれる人もいるかもしれない。
初めて外に吐き出す、長い間胸に詰まっていた私の思いです。ちょっと長いかもしれませんが、もし読んでいただけたら嬉しいです。
みんな、いろんな悩みを抱えているよね。
言いにくいことだから、誰かと共有できるとうれしいな。
同じ悩みを持っている人の気持ちが、少しでも軽くなってほしいという願いから、このサイトは立ち上げられました。
おうちの臭い?小学生のとき
初めて「臭い」を指摘されたのは小学生のときでした。
小学生の頃は、各家庭それぞれ匂いがあるなー、と感じていました。お友達のYちゃんちは洗剤のようなにおい。Mちゃんちは、おばあちゃんが毎日お仏壇に供えるお線香のにおい。
うちは、お父さんがいつもお酒を飲んでいるから、お父さんのタンスは酸っぱいにおいがするなぁと感じていました。(今思うと二日酔いの臭いだけじゃなかったのですね。)
ある日の下校時、近所に住むKくんが、「asecoちゃんは、マヨネーズみたいなにおいがするね。」と言いました。えっ、私はマヨネーズのようなにおいがするんだ…。それってどんなにおいだろう。油?甘酸っぱい?自分が放つ臭いというものを初めて考えた瞬間でした。
それでも10代のころは、それほど汗の量や臭いに悩むということはありませんでした。
次に自分の臭いを指摘されたのは、大学生のときでした。
友人からの指摘「ワキガの人って・・・」
この頃にはうっすらと自分の臭いが気になり、汗の量が人より多いことにも気が付いていました。デオドラントスプレーを使ったり簡単な対策をするようになっていました。
大学は急な坂道の上にあり、暑い日や逆にたくさん着込む冬の日、汗ばんで登校することがありました。そんな日はトイレで汗を拭いたり自分で服の襟元を鼻先まで伸ばして、臭っていないかを確認したりしました。
ある日、かなり汗をかいて登校してきた私は、同じ研究室の仲良くしていた女の子とトイレの洗面台で隣り合わせました。
彼女は鏡越しに私を見て唐突に、「ワキガの人って自分では気が付いてないよね。」と言いました。彼女はそう言った後、私の反応をそっと観察しているような気がしました。彼女は私のことを言っている、と直感的に思いました。
その瞬間、胸やおなかの内臓がキューっと収縮して、息苦しいような感覚になりました。恥ずかしい気持ちで身が縮こまるようでした。私は彼女から目を逸らしたまま、「そうだね」とか、そんな一言を返しました。
彼女の発言を「私への臭いの指摘」だとするのは、考えすぎかもしれません。彼女は一般論を言っていたのかも。
ただ、そのときの恥ずかしくて悔しい感覚を今でも覚えています。本当は臭いの自覚もあるのに、自分がそれを他人の前で認めることで余計に傷つきたくないから、まるで自分はそうでないかような立ち位置から返事をしたこと。そして、そんな返事をすることで、彼女の発言通り「ワキガの人は自分では気が付いていない」を、まさに自分が実証してしまっているという恥の恥。違うのに。気づいているのに。
思い出しながらこの文章を書く今も、何とも言えない胸の重たさが戻ってきます。
自分が1番気にしていることを指摘されると、素直に認めるのは難しいね。
体の臭いはコンプレックスを感じやすいので、人に指摘されると傷つきやすいポイントですね。
でも、指摘してくれる優しさというのもあるのかもしれませんね。
いつも臭いに気づかれることに怯えていた
でも、そのときの大学時代の友人には感謝をしています。
正直、彼女の発言にも傷ついたのですが、彼女なりにやんわりと伝えてくれたのかもしれません。そして、彼女とのやり取りのおかげで、私は自分が傷つかないようにするべきことは、自分を偽ることではなく、具体的な対策であると気付くことができました。
それから私は、汗染みのできそうな服には、汗取りシートを付けたり、デオドラント剤をいろいろ試したり、前以上に積極的な対策をするようになりました。
しかし、どんどん汗や臭いに怯え、人の接近に怯え、いつもどこか臆病な気持ちで過ごすようにもなっていました。
電車で吊り革を持ったり人が近くに座ると、緊張してしまう!
友達と近くの席に座るのも、ためらっちゃうことがあるな。
コンプレックスのために、心のままに行動できないことは辛いことですね。
治療をしてもしなくても。今の私が思うこと
あれから20年、たくさん悩んで困って、いろんな対策を試して生きてきました。
そして最終的に、私は治療によって悩みの大半を手放すことができました。気持ちがすごく晴れやかになったと感じています。
しかし、悩んでいる人は100%治療をするべき!とまでは思っていません。人によって症状も環境も様々であると思うからです。そもそも汗は人間に備わった大切な機能であるはずです。完全なる敵だ!とも言えないし、臭いにもまだ解明されていないメリットがあったりして。特定の人にめちゃくちゃモテるとか。森の中で危険な野生動物を寄せ付けないとか。
汗のメリットに関する新しい知見がない現時点においては、私自身は治療をやってよかったなと思うので、自分の経験した多汗症の対策や治療をこのサイトで紹介していきたいと考えています。
しかし、ここを訪れてくれた方が治療を選択してもしなくても、同じ悩みの人がいると勇気づけられたり、こんな選択肢もあるんだなと気づくきっかけにしてもらえたらいいな、と思っています。
縮こまった心と体が解放されて、自由で晴れやかな毎日になりますように。
治療するかしないかより、自由な気持ちで過ごすためにどうするかを選んでいきたい!
このサイトでは、そんな気持ちに寄り添える情報が